時は、西暦2201年。
それは、とある場所でとある男がその生涯を終わらせた。
とある場所とは、ネルガルが所持する表には公表していない裏のドックであり
とある男。その男の名前はテンカワアキト。
テンカワアキトは、若くしてその生涯を終わらせた。
いや、終わらされたと言った方が良いのだろう。
何はともあれ、テンカワアキトと言う男は物言わぬ冷たい肉の塊になったのである。
ただ、その後のテンカワアキトと言う存在だった肉の塊を見た者は居ない。
テンカワアキトの親友でありネルガル重工の会長であった男も
テンカワアキトと共に戦火に身を焦がした桃色の少女も
テンカワアキトに恋愛感情を抱いていた会長の秘書の女性も
テンカワアキトの五感を取り戻そうと研究していた金髪の女性も
テンカワアキトが駆る黒百合の棺をメンテナンスしていた男も
テンカワアキトと言う存在が死に、人間の形をしていた肉の塊を直接見た者は居なかった。
上記の五人が見たのは、監視カメラの映像。
テンカワアキトと共に戦火に身を焦がした少女には、ブツリと大切なモノが切れる感覚。
慌てたようにテンカワアキトが倒れていた場所に赴けば其処は何も無い場所。
ガランとした部屋のみだった。
テンカワアキトと共に戦火に身を焦がした少女は、声が届かない声が聞こえないと泣き叫んだ。
テンカワアキトの親友たる男は、唖然とした後苛立ちを顔に出し頭を乱暴に掻いた。
テンカワアキトに恋愛感情を抱いていた秘書の女性は、泣き叫ぶ少女を抱きしめ静かにナく。
テンカワアキトの駆る黒百合の棺をメンテナンスしていた男は唖然とした後、スパナを床にたたきつけた。
テンカワアキトの五感を取り戻そうとしていた女性は、その場所を食い入る様に見た後
テンカワアキトの遺体が消えるまでの経緯を、改めてみた。
そしてその女性は告げた。